預貸率 78% |
米国の大恐慌時、米国の国内総生産(GDP)はわずか4年間に46%も失われた。企業によるネットの債務返済がGDPの6%に達し、家庭の貯蓄がGDPの4%強に上っている日本は、1929~33年の米国と同じに、毎年GDPの10%を失ってもおかしくはなかった。 (ウォール・ストリート・ジャーナル 4/20)
欧米金融資本にバブルを作らされ、崩壊させられたあと、自民党旧田中派を中心とした、無茶苦茶な公共投資が日本を救ってきたと思っています。バブル崩壊以降、企業は利益を出すよりも借金を返すことに力を入れて来ました。竹中・木村剛の貸し剥がしで、益々、借金返済を強めた訳です。特に日本人は、「我慢しましょう、勝つまでは」と消費を我慢してしまう国民なので、 結果、BIS規制の制約もあり 銀行の預貸率は2000年の98% 2009年には78% と 銀行が民間に貸せない状態が続いています。 ケインズをやらなければ、経済が回らなくなってしまいます。
図は、統計の取り方で こうも違うのか、理解できませんが、流れとして
参考記事
(転載)
2010年 4月 20日 ウォール・ストリート・ジャーナル
「今は日本ゆうちょ銀行民営化のときではない」 リチャード・クー
日本政府は、既に世界最大級の貯蓄受け入れ金融機関の一つになっているゆうちょ銀行の預け入れ上限を拡大する計画だ。この動きは小泉純一郎元首相の民営化政策を振り出しに戻すものだとの批判がある。実はその逆であり、今はゆうちょ銀行を民営化するのにまずい時期なのだ。
日本郵政は200兆円規模の政府所有の金融機関だ。民営化推進派は、ゆうちょ銀行の民間への貸し出しは極めて限られたものであるため、民間部門の資金需要は同銀行によって満たすことができないと見ている。その通りなら、政府にとっての正しい政策というのは、財政赤字とゆうちょ銀行の役割を減らすことだ。これがまさに小泉元首相が2005年に郵政民営化を打ち出したときに望んでいたことだ。
しかし、バブルが1990年にはじけてから、ゼロに近い金利であるにもかかわらず、企業と家計は借金を減らしてきた。彼らがバブルの最中に借入資金で購入した資産は価値を失う一方、債務が残され、バランスシートは大変な修復を必要とする状態になっていた。民間部門が利益を最大限するのではなく、債務を最小化しようと動いたことから、多くの金融機関は歴史的な低金利にもかかわらず貸し出しができなくなっていた。その結果、銀行の預貸率は2009年には 78%と、2000年の98%を大きく下回った。
民間部門全体がレバレッジ解消に動けば、経済はデフレスパイラルに落ち込む危険性に直面する。貯められた資金と返済された資金が銀行システムに借りられないままに残ってしまうからだ。実際、低金利にもかからわらず民間経済部門がレバレッジ解消を続けた最後のケースは米国の大恐慌時だった。このとき米国の国内総生産(GDP)はわずか4年間に46%も失われた。企業によるネットの債務返済がGDPの6%に達し、家庭の貯蓄がGDPの4%強に上っている日本は、1929~33年の米国と同じに、毎年GDPの10%を失ってもおかしくはなかった。
このようなデフレ圧力に直面しながらも、日本はこの20年間、GDPをバブル時のピークを上回る水準に維持することができた。これは政府が民間部門の余剰貯蓄を借り入れて支出したからだ。別の言い方をすれば、日本経済はこの20年間、民間投資のクラウディングアウトという打撃を受けなかったのだ。経験したのはまさにその逆のクラウディング「イン」だった。この期間の経済界と家庭の第一の優先事項は投資を拡大することではなく、債務を返済することだった。ゆうちょ銀行が国債を購入してくれることで、政府はその差を低コストで埋めることができた。この意味で、ゆうちょ銀行は日本経済に大きく寄与したのだ。
今日、民間部門のバランスシートはようやく修復され、企業の資本に対する負債比率はバブル絶頂期の4.05から1.78に低下した。しかし、大恐慌以後全く借り入れを行わなかった数百万の米国民と同様に、日本には、ゼロ金利にもかかわらず、債務に対する極めて強い嫌悪感がある。ゆうちょ銀行を民営化して、同銀行が専門知識を有さない民間部門への融資をさせるなら、同銀行は事業を成功させるために貸出金利を民間より低くすることを強いられるだろう。日本の貸し手が国内事業でリスク調整後の健全なリターンを得られなくなっている現在、ゆうちょ銀行に一段の低金利で市場に入らせれば、不良債権の山を築いてしまうのは確実だ。同時に、民間部門への貸し出しの専門知識を有する民間銀行は市場でクラウディングアウトされ、国債購入を強いられることになる。
今後起きてくるこの問題には歴史の前例がある。石原慎太郎東京都知事は2004年、民間部門は資金を欲しており、貸し出しが少ないのは既存銀行に専門知識がないからだと主張した。こうして彼は税金を使って新銀行東京を設立した。その数年後には同銀行は資本金の80%以上の損失を計上し、現在は税金の大量注入で生き永らえている。外資が所有する日本の銀行や木村剛氏―郵政民営化を推進した竹中平蔵氏の同志―が設立した銀行による貸し出し拡大の試みはすべて期待外れだった。
これはゆうちょ銀行がこうした問題がないということを言っているのではない。同銀行はしばしば、民間銀行よりも高い貯蓄金利を提供し、その投資決定は説明責任のない官僚によって下されていた。しかし、これらの問題はすべての貯蓄を国債に投資するよう義務づければ解決する。このようにすれば官僚は資金の投資先について決定権を持てなくなり、国債の利回りは他の金融機関の社債より低いため、民間金融機関から資金を奪うリスクもない。
実際、民間部門の資金需要が戻るまで、ゆうちょ銀行にすべての投資を国債に振り向けるように義務づけることが、公共、民間の両部門にとって最善の選択肢だろう。景気が正常な状態に戻ってからゆうちょ銀行民営化の話し合いを行っても遅すぎるということはない。
(リチャード・クー氏は野村総合研究所のチーフ・エコノミスト)
(転載終わり)