別の本を読む目的で図書館の棚をさがしていると、『隠されたヨーロッパの血の歴史』 副島隆彦(著)が目に付いた。 パラパラとルネッサンスあたりの政治が書かれていて読むと面白い。 映画「アマデウス」でモーツアルトが「後宮からの誘拐」の作曲で、皇帝が「もう そろそろ、ドイツ語オペラも良いのでは」と言っていたシーンがありますが、重商主義でフランス・イギリスが力を持つまでは、イタリアが中世の世界の中心でした。 そして、著者の副島さんも書いているように、人生の経験や知恵がついて分かることがある、そんなイタリアを求めました。 まずは ルネッサンスとは何か?
(引用)ルネッサンスとはアッカデミア・ネオプラトニカ(新プラトン学院、accademia neoplaonika)、新プラトン主義運動のことだ。(引用おわり)
(引用)「共和制」とは何かを日本人に理解してもらうためにも私はこの本を書く。一番簡単に言えば「共和制とは王様がいない政治体制のことだ」。王様(国王)がいたらいけないのだ。(引用おわり)
(引用)フィレンチェの共和政治体制 (まさしくミケランジェロたちの血の叫び) の血みどろの戦いがあった。ルネッサンス=新プラトン主義の15世紀後半、1440年代~1490年代に人類は最も高い次元に一度、到達したのだ。(引用おわり)
「人間は贖罪を持って生まれてきた」というローマ・カトリック に対して、
「人間は王様による支配もなく、自由に政治や学芸について討論して、のびのび生きてよいのだ」という新プラトン主義を推し進めた老コジモとロレンツォ。
これが、ルネッサンスなのです。
その時代背景には1453年の東ローマ帝国の滅亡があり、大量の学者がコジモ・デメディチを頼ってフィレンツェに流入した。フィレンツェの人文学者達は、彼らの持ち込んだプラトン主義に魅了され、コジモはマルシーリオ・フィチーノを中心にプラトンを研究するための研究施設を設立し、それを古代にプラトンが作ったものになぞらえ『アカデミア』と命名した。
(引用)
老コジモは、コンスタンチノーブルから来たギリシア人の授業を聞いて「どうもローマ教会が教えてきたことはウソだな」と鋭く感じた。それで老コジモは、この人文主義たちのパトロン(資金援助者)となってどんどん秘密を暴かせた。そのひとつが、旧約、新約の両方の聖書のギリシャ語からラテン語への翻訳書出版活動だ。大ウソつきのローマ教会の僧侶たちのウソがどんどんバレ始めた。これがルネッサンスの本体であり、中心だ。このため重要な絵にあるごとく4人の人文学者が重要であった。
1、フィッチーノ 2、ランディーノ 3、ポリツィアーノ 4、ピコ・デッラ・ミランデラ の4人である。
サンタ・マリア・ノヴェラ教会 ギルランダイオ画
プラトン・アカデミーのメンバー
左から、フィチーノ、ランディーノ、ポリツィアーノ、ジェーティーレン・ベッシィ。
知識人たちが集まっている様子。
ロレンツォ・イル・マニフィコの間 ヴァザーリ画
中央がロレンツォ、右手に(向かって左側)にランディーノ
向かって右奥から2番目が ポリツィアーノ 3番目がミランデラ。
『ロレンツォ豪華王』イヴァン クルーラス (著)は、
ブルジョアの羊毛組合に対し、繊維工業の下層労働者側について革命的なことをして追放などメディチ家の歴史(1201年以降)、商売や金融業、老コジモの台頭、ロレンツォのフィレンチェ共和国(共和制)と、他国との外交:ローマ(神権政治)、ナポリ王国(王政)、ミラノ公国(君主制)、ベネチア共和国(寡頭制)など、フィレンチェ共和国全体の学術的な歴史が書かれています。
こちらは、学術書だけあって副島本よりも詳しく、アリストテレスとプラトン、教会とルネッサンスの関係が書かれています。
(引用)
アリストテレスは、いかなる超越者の介入も自然を動かしてはならないとの原理から出発していた。すなわち自然に運動を賦与した最初の衝撃の後、自然は与えられた方向に進むのである。神を創造世界の外側に置くこの原理は、アルベストゥス・マグヌスからトマス・アクィナスまでの中世神学全体によって採用され、神によって裁かれ、断罪され得るのである。
プラトンは、アリストテレスとは反対に、自然界には常に変わらず精霊が存在しており、無数の媒介者を通じてある定まった目的に従って行為を行っているものと主張していた。プレトンは、とりわけプロティノスおよび二世紀のアレクサンドラの哲学者たちの影響を受け、このプラトン説とそれを発展させた理論をとりあたのだった。彼は、宇宙には、隠れた意味があり、それはヘルメス・トリスメギストスやアレオパゴスのディオニュソスの神秘学説によって部分的に明らかにされているとした。アリストテレスが想像したような自然の法則の機能は、恵み深い霊的力が働くことで変化をこうむり得るといううのである。
この哲学によれば、神と人間との関係は、もはや伝統的なキリスト教におけるように恐怖と罪の感情によってでなく、自由と愛によって特徴づけらられる。 この考えは、コジモと彼の周囲の商人や文人に感銘を与えた。彼はプレトンの説くところに従い、この説を少人数の学者の会合で学び瞑想すべきものと考えた。それは、プラトンのアカデミアを念頭に置いたものであった。
(引用おわり)
漫画『花の都(フィレンツェ)に捧げる』森川久美 (著)は、不倫とかもするロレンツォと厳格な信仰を強制した聖職者のサヴォナローラとの確執が書かれています。
『銀色のフィレンツェ―メディチ家殺人事件 』塩野七生 (著)は、ロレンツォ亡き後のフィレンチェで、アレッサンドロ暗殺、コジモ一世トスカーナ大公の誕生が書かれています。 出発前に買い、欧州の列車の中で忘れたのが痛かった。
フィレンチェの行政府が ヴェッキオ宮殿、
司法は、バルジェッロ宮(塩野七生の本では重要)、
老コジモ・ロレンツォの本宅 リッカルディ宮、
コジモ1世が建てたオフィス ウフィツイ美術館
などがフィレンチェ観光の中心です。
『隠されたヨーロッパの血の歴史』(以下 副島本)をフィレンチェ旅行のガイドブックとして見て来ました。